第4話

99年10月6日

 目覚めると朝になっていた。何時間寝たのかよく分からないがすっかりと周りは明るい。もちろんU-wiは眠り続けている。時差はタヒチと比べて4時間早い。そう考えるとほんの数時間しか寝ていないはずだ。5時間5分のフライトははやる気持ちにこたえるようにあっという間に過ぎていった。
 窓の外にイースター島の姿が見えてきた。徐々に近づいてくるその島はごつごつとした岩が転がるだけのなんの変哲もない島だった。AM 9:50、着陸する飛行機。ここマタヴェリ空港の滑走路はこののどかな島に不似合いなほど立派である。アメリカ合衆国が1985年にスペースシャトルの緊急着陸用として改修を加えたからだ。
 タラップを降りると肌寒い空気がTシャツのMALを襲う。晴れているが寒い。何故か暑いイメージがあるイースター島だが決して南国ではない。冬には最低気温8度になることもあるらしい。日本と夏、冬が反対で今はちょうど春になりだした頃という感じだ。ちなみに真夏は2月、真冬は8月。雨季は5月から10月。風は年中きつい。
 空港施設は北海道の地方の空港みたいな本当に小さな物。周りに広がる風景も北海道そのものである。入国手続きを待つのは屋外、その横では預けた荷物が運び出されるのが見える。空港内にはモアイのレプリカ(身長1mぐらい)や木で出来た巨大なトカゲなどが置いてある。
 入国審査は無事終えたわれわれだったが、やはり機内で悩んだ手荷物の記入カードで引っかかった。印を付けた方はどうやら持ちこみ禁止物を持ってるよ、という方だったようだ。「We don't have....」と説明し通してもらうことが出来た。入国ゲートを出るとかなり人がたまっている。出迎えの地元の人と客引きのようだ。われわれの名前のプレートを持ったホテルの係員に名前を告げるとレイをかけられ車へと案内される。そういえばこの旅行中、どこにいっても空港を出ると必ずレイをかけられ、帰るときは貝殻で編んだネックレスをかけられた。最初はうれしいのだが香りはきついし、ちくちくするしですぐに嫌になってくる。バンに乗りこみいざホテルへと向かう。

 ホテルは空港からほんのわずかの場所。歩いてでもすぐ行ける。そもそもこの島で人が住んでいるのはこのハンガ・ロア(HANGA ROA)村だけで、しかもその村すら大きくないのでどこのホテルもまぁ近いのだが、その中でもわれわれのホテルは空港に近かった。
 われわれが泊まるホテルは「HOTU MATUA」。このイースター島の伝説の初代王の名前と同じである。ちなみにイースター島という呼び名はオランダ人がこの島を発見(という言い方も失礼だが便宜上ここでは発見という)したのが復活祭の日だったのでそう名づけただけであり、現地の言葉ではRAPA NUIという。スペイン語ではISLA DE PASCUA。
 ホテルの外観は平屋で民宿のようである。若干の失望感と安心感(こんなところに近代的なホテルがあればそれだけで興ざめである)が入り混じる中、ロビーへと向かう。そこで名前とパスポート番号、滞在期間を書きこむと、昼食の時間と昼からの観光の時間を告げられた。昼食はツアーの案内にはかかれてなかったがどうやら付いてくるようだ。
 部屋の鍵をもらい部屋へと案内されるとわれわれは興奮した。中庭は南国風でプールまである。もちろん入れないがちゃんと水も張ってあり、テーブルやイスもちゃんと置いてある。やるなHOTU MATUA!表からだとただの民宿でも中身はなんだかリゾートしてるぞ。更に部屋に入ってもビックリ。とても広く綺麗である。おまけに中庭に面しているところにはソファとテーブルが置いてある小部屋となっており、ちょっとくつろぐのに最適な感じである。後に聞いたところではこのホテルは島の中で最高級に近いらしい。とりあえず中庭で記念撮影をした後、昨晩シャワーを浴びなかったMALは早速シャワーを浴びる。U-wiは昼食までまた眠りにつき始めた。

 昼食の時間となり食堂へと向かう。やたらと広いが食べに来ているのはわれわれとA夫婦のみ。ミネラルウォーターを頼むと1.5リットルのペットボトルが出てきた。ポークのステーキと山盛りのマッシュポテトにうんざりとしたが、セルフサービスの味の無いコーヒーにはもっとビックリした。コック長らしき人はやたらと陽気でわずかながら日本語を話すことが出来る。

 食後一旦部屋に戻り、昼からの観光の準備をする。準備と言っても持って行くものは上着とカメラ、ミネラルウォーターだけなのだが。そういえば今回の旅行にはこれでもか、というぐらいフィルムを持ってきていた。APS40枚撮り5本、25枚撮り5本。水中用「写るんです(27枚撮り)」2本、チェキ用フィルム40枚分、あわせて419枚分のフィルムである。これに加えてビデオカメラも、という意見もあったが、ビデオカメラの弱点は結局撮る立場の人間がカメラを通してしか物を見れなくなる、と卒業旅行に持参した時に気づいた為今回は見送った。またチェキはこの旅行に合わせて購入したのだが、いろんな人とのコミュニケーションの手段に最適だった。デジカメも今回は見送り。

 PM1:30 ホテルのロビー(と言っても相変わらず民宿みたいなところだが)にてイースター島観光のガイドを待つ。少し遅れてやって来たのは女性のガイドと男性の運転手だった。自己紹介を済ましておんぼろのワゴンの中に乗りこむ。どれくらいおんぼろかというとフロントガラスがひび割れているくらい、といえば伝わるか。もしくは10年以上乗りつづけた営業車とでも言おうか。車の中には先客がいた。チリ人であろうと思われる母娘であった。最初は祖母と孫娘かとも思ったがどうやら親子のようだ。こうしてわれわれとA夫婦、チリ親子の3組にてイースター島観光が始まった。

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